関わる人みんなを笑顔に! コットンパールのアクセサリーブランド『Ratel(ラーテル)』立ち上げ / 松村 舞 さん(NPO法人『働くママを輝かせるプロジェクト』)

インタビュー

松村 舞 (まつむら まい)

1983年1月20日生まれ。福島県相馬市出身、南相馬市在住。

NPO法人『働くママを輝かせるプロジェクト』にて、子育て支援活動や母親の就職支援に従事。小学校にて放課後子ども教室コーディネーターや、ご当地ヒーローの運営スタッフなどを務める。
2016年、地元の綿を使たコットンパールのアクセサリーブランド『Ratel(ラーテル)』を立ち上げる。綿花の栽培から、アクセサリーの製作・販売までを手掛ける。

夫と長女16歳、長男14歳の4人家族。

こんな人に読んでほしい
■NPO法人の立ち上げや運営に興味がある
■製造や販売を仕事にしたい
■ブランクを乗り越えて社会復帰したい
■育児と仕事のバランスを模索している
■仲間と一緒に働きたい

――コットンパールを使ったアクセサリーブランド『Ratel(ラーテル)』を立ち上げた舞さん。もともとは専業主婦だったとのことですが…。

はい。13年間、専業主婦をしていました!ある日、NPO法人の子育てイベントに参加申し込みに行ったところ「一緒に働きませんか?」とスカウトされたのが社会復帰のきっかけです!

そのNPO法人は子育て支援をしているのに、当初は男性スタッフしかいなくて。

子供や育児のことを一番理解しているのはやっぱりお母さんなので「母親のスタッフが欲しいね」と話していたところ、たまたま私が訪問したそうです(笑)

――そんなことあるんですね!?専業主婦からある日突然、就職することに対しての不安はありませんでしたか?

もちろん全くなかったわけではありません。仕事をしたくても特に資格もなく、働くことに抵抗すら感じていました

だけど、そんな私でも声を掛けてもらえたことが嬉しくて。子育ての経験を活かせる仕事があるのなら!」と快諾しました。

主な仕事内容は子供向けのイベント開催でした。頑張って準備をして迎えるイベント当日、子供たちが喜んでいる姿を見られるときは最高に嬉しかったです。

小高 放課後子ども教室の様子

――すごく充実していたことが舞さんの表情からひしひしと伝わります…!でも、イベント開催とアクセサリーブランドの立ち上げは全然違う仕事ですよね?どんな経緯があったんですか?

きっかけは東日本大震災でした。地震があった2011年3月、長女は幼稚園を卒業して小学生になる年でした。幼稚園も小学校も避難準備区域だったので、卒園式ができなくて。入学式もどうなるかわからない状態。

家からは出られず、物流は滞り、食糧を買うことすらままならない。不安な毎日でした。

育児中の母親たちは小さな子供を連れて外に出ると「周囲に迷惑がかかるのではないか」と考え躊躇していました。

普段仕事をしているはずのパパも職場へ行けず家にいるので、ママ友同士がお互いの家を行き来する機会もなくなってしまいました。

――新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が発令された時と同じような状況でしょうか?

はい、よく似ています。世間が暗いムード。

だからこそ「お母さん同士が集まれたらいいな」「子供たちを遊ばせる場所があればいいな」と考え、サークル活動を行うことに決めました。

そうしたら、たくさんの人が来てくれて。やっぱりみんな集まれる場所を探していたんだなあと。

回数を重ねるうちに「せっかくだから、ただ集まるだけではなくて、何かしたい!という想いが私の中で芽生えました。サークルのメンバーにそのまま胸の内を話すと「いいね!」「舞さん、何か考えてよ」と(笑)

――急展開ですね…!

「お母さんの気持ちを明るくしたい!と思い、女性のテンションを上げてくれるもの、キラキラしたアクセサリーを作れないかなあと。

調べてみると、育児中の母親たちを集めアクセサリーを製作と販売をしている団体が宮城県石巻市にありました。

震災直後、育児に疲労困憊しているママ同士のコミュニケーション社会との繋がりを生み出していることを知り、迷わず見学へ。

津波の影響でまだ電車が止まっていたので約3時間かけて車で石巻まで行き「私たちもアクセサリーを作って販売したいので、いろいろ教えてください!」と現地交渉しました。

――すごい行動力とバイタリティ…!

「どんなアクセサリーにしよう?」「何か地元のものを使えないだろうか?」とあれこれ考えました。

そんな時、南相馬市で綿花が栽培されているという情報が入りました。

津波被害があった農地は、海水の影響で野菜が育たなくなってしまいます。そこへ綿花を植えると土の塩分を吸い取ってくれ、また農作物を育てられる土壌に戻してくれるんです。

――綿花にそんな力があるんですね!

農家さんは畑のために綿花を育てているので、できた綿花をどうしたら良いか分からず困っていて。

綿花からコットンパールが作れたら「女性の気持ちを前向きにするだけではなく、復興支援にもなる!と思いました。

――点と点が繋がりましたね…!

最初はコットンパール作りにも一から取り組みましたが、自分たちで作ってみたら大失敗!

あまりに上手くいかないので既製品のコットンパールを購入して割ってみたら、手作業では不可能なほど圧縮されていることが分かりました。コットンを綺麗に染めることも、とても難しくて。

最終的には、綿からコットンパールを作ってくれる会社が日本に1社だけあったので、そこへ依頼することにしました。原材料の綿花は地元の農家さんから買い付けるのと同時に、私たちも栽培しています

農家さんと一緒に、畑作業をする様子

――コットンパールをつくるには高度な技術力が必要だったんですね。

はい。結局工場にお願いすることにはなりましたが、私たちのつくる国産の綿花は大量生産できず、ラインにのせるには量が全然足りません。

すべて手作業でお願いしているので、一つのコットンパールの原価は市場の約10倍もします。でも「純国産」が、私たちのブランド『Ratel(ラーテル)』のこだわりです。

――かっこいい…!悪戦苦闘した分、想いのこもったコットンパールに仕上がっていますよね。つややかで発色もとても綺麗です。

初めて作った試作品。想いの詰まったコットンパール

母親それぞれが「育児と仕事」理想のバランスを調整できるように

――舞さんが『Ratel』をNPO法人内のプロジェクトとして立ち上げた理由はありますか?NPO法人って非営利団体ですよね…?

「NPOってボランティアでしょ」って言われますが、きちんと働けばきちんと稼げます。もちろん商品を販売して利益を出しても良いんです。

NPO法人にしている1番の理由は身軽に動きやすいから。仕事の拘束時間を長くしたくないからです。

――なるほど。

フルタイム勤務じゃない人は、点数が足らなくて保育園に子供を預けられません。でも「子供を預けて働くか、育児をするために働かないか」1か10かしか選択できないのは違うなあと。

働いていないお母さんたちだって、育児ばかりでは疲れてしまうし息抜きもしたい。フルタイムまではいかなくても、少しは仕事をしたい気持ちがある。

じゃあ子供を職場へ連れてきて働いたらいい!

『Ratel(ラーテル)』は子連れで働くママを輝かせるために立ち上げたブランドですから!

子供も一緒に綿花の収穫を楽しむ

――素敵!でも、こんな繊細なアクセサリーなのにお母さんたちは子連れで作業できるんですか?

人数が多いときは、私や主人が子供たちの面倒を見ることもあります。

基本的には、子供たち同士で仲良く遊んでいてくれることが多いですね。夕方になっても「まだ帰りたくない」と駄々をこねることがあるくらい楽しんでいます

お母さんたちは、みんなおしゃべりに夢中になりすぎることも!そういう時は「口だけじゃなくて、手も動かしてね~」とお願いしています(笑)

県外から引っ越してきた方が「こちらに来て初めて友人ができました!」と喜んでくれたこともありました。

和気あいあいとした雰囲気で作業していますよ。

アクセサリーを作る母親たちと、その横で遊ぶ子供たち

――わあ!それは嬉しい。子供がいる明るい職場はいいですね!

実はきちんとした工房ができたのは最近なんです。

震災後この辺一帯は家賃が跳ね上がり、どの物件も高くてとても借りられませんでした。そこで自宅やコワーキングスペースで作業していました。

でも綿農家さんのお知り合いに空き家の持ち主がいて、すごく良心的な価格で貸していただけることになったんです。

ご縁があっての工房

――ご縁が繋がりますね~!

ただ、もともと別荘として使っていた物件で、普段はあまり使われておらず…。動物が住み着き廃墟に近かったです(笑)

大掃除から修理まで、約1年かけて毎日ちょっとずつ、本当にこつこつと作業しました。

業者に頼みたくても費用が掛かるし、そもそも引き受けてもらえませんでした。店舗や学校の修復作業で手一杯で、小さい古民家に人手が割けない状況だったんです。

入り口を入ると囲炉裏がお出迎え

――商品を形にするだけでも大変なのに、商品を作る環境整備にも一苦労。震災後ということもあって、なかなかスムーズにいきませんね…。

工房の環境を整えているうちに、一緒にコットンパールを作っていたお母さんたちは、パートを始めたり職場復帰したりしてしまい、メンバーは減ってしまいました

そこに新型コロナウィルスのことがのしかかり、現在はあまり活動できていない現状です。

でも「焦らなくていいかな」って思っています。のんびりこつこつ頑張っていたら、そのうちまた必要としてくれる人と出逢えるんじゃないかなあと。

憩いの場でもある工房の作業室

――そうですね!「子連れで働く」スタイルを望んでいるお母さんって、すごくたくさんいると思います!

「子供を預けられない、でも働きたい!」というお母さんがいたら「子供を連れてきて一緒に仕事しよう!」って言えるように、今が踏ん張り時です。

震災後、子供の連れて行き場もなく落ち込んでしまったお母さんが、おしゃれをしてメイクをして集まるだけでも「やって良かった」って思った。あの時の気持ちを忘れずにいたいです。

――一日中、誰とも話さずに過ごすこともありますもんね。私も専業主婦時代、世間から置いてけぼりにされてしまったような寂しさを感じたことがありました。

はい。それに私は育児だけをしていた頃は、同じことの繰り返しでつまらなくて。毎日決まった時間にご飯を食べて、お風呂に入って寝る…で、また朝が来る。

仕事を始めてからは、もちろん大変なこともあるけれど、それが刺激になって充実しています。「できるのかな?」と思いながらも挑戦して本当に良かった

「働きたい、でも一歩自分から踏み出せない」当時の私と同じ想いをしているお母さんに、今度は私が声を掛けたい。

所狭しとコットンが並ぶ工房内

――自分がしてもらって嬉しかったことを今度は他の人に循環しようとする舞さん、素敵です…!

ありがとうございます!その循環がもっと巡るといいなと思っています。

今は私が「この日にみんなで集まりましょう」と呼びかけて仕事をすることが多いですが、理想は私が声をけなくても、誰しもが積極的に気軽に工房へ来れるようにしたい。

「いつでも来ていいからね」とは伝えてあるんですが、それではなかなか人が集まらなくて。「舞ちゃん、忙しいでしょ?」って言われちゃう(笑)

いまはまさに仕組みづくりをしている最中です。『Ratel(ラーテル)』で、もっとお母さんの雇用を生みだせたらいいな

Ratel自慢の純国産コットンパールを使ったアクセサリー

一緒に仕事や家事をする 協力し合う家族の関係づくり

――舞さんには16歳と14歳のお子さんがいらっしゃいますよね?二人はお仕事のことをどう思っていますか?

子供たちにとっても私の仕事は身近なもの。職場へ連れて行ったり、仕事を手伝ってもらったりしています。

私の働く姿を見て「お母さんすごい!お仕事、頑張っているんだね」と言ってくれた時はすごく嬉しかったです!

家にいる時とは違う、また別の母親の一面を見せられたかな。

――舞さんにとってもはや仕事は生活の一部なんですね。ご主人の理解はありますか?

主人もとても協力的ですよ。ご飯を作ったり、その他の家事をしてくれたりするだけではなく「うちのお母さんは一番すごいんだよ」と子供たちにいつも話してくれます。

そのお陰か、家族間でいつも自然と協力し合う雰囲気ができていますね。

「誰かを楽しませる」仕事をしているからなかな。家族みんなが「誰かのため」を意識して行動しています

まずは自分から協力しようとすると、必ず家族みんなの協力や理解を得られるはずですよ。

――他人に望む前に「まずは自分から」ですね。それにしても素敵なご家族…。

我が家はユニバーサルスタジオが大好きで年に1回大阪へ旅行していましたが、今年は新型コロナウィルスの影響で行けなかったんです。

そうしたら母の日に家をユニバーサルスタジオにしてくれました!

ちゃんとチケットを作ってくれて、家中にアトラクションが用意されていました!ハリーポッターエリアでは杖を振って呪文を唱えると魔法がかけられました(笑)

おうちUSJのチケット!裏面にはQRコードが描かれていて本格的

人を笑顔にしながら、常に前進していきたい!

――震災から間もなく10年がたちますが、それも踏まえて舞さんのこれからの目標があれば教えてください。

いまだに「元の生活に戻したい」と言う人も多いですが、私は「もっと新しい挑戦をしたほうがいい」と思っています。

福島に県外から復興支援へ来てくれている人もいっぱいいるし、この10年間で世の中の情勢は変わりました。

「震災のせいで」と言うこともできるけど「震災があったから」経験できたこと、勉強できたこともありました。

抵抗せず新しいものを受け入れ、常に前進していきたいです!

――ご自身の働き方だけではなく、たくさんのお母さんたちの働き方と向き合ってきた舞さんからは多様な価値感を受け入れる懐の深さを感じました。新しいものと古き良きもの、ずっと福島にいる住人と移住者。きっと舞さんはその懸け橋になりますね!

たくさんの方と知り合えること。頑張れば頑張った分だけ、たくさんの笑顔が見られることが今の仕事のやりがいです。

いずれはこの仕事を若い世代に引き継いでいきたい。そのために、人を楽しませること、人を笑顔にすることができる人材を育てたいです。

これからの未来をつくって行くのは子供たち、若者たちなので「頑張れば何でも出来るよ!」という背中を私が見せていきたいです!

人それぞれ進みたい道があるはずだから、みんなが自分のやりたいことを見つけて頑張ってほしい

そういう人を全力で応援してあげたいです!

――どんな境遇も捉え方次第でプラスにできるということを舞さんから学びました!お話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

一日のタイムスケジュール
5:00 起床、洗濯
6:00 長女 朝食
6:30 長女 登校
6:45 長男 朝食
7:10 長男 登校
8:30 夫と朝食
9:00 身支度
10:00 事務所で仕事
15:00 帰宅
16:00 夕食の買い物、ウォーキング
17:00 夕食準備
20:00 長男と夕食
21:00 娘帰宅、夫と娘 夕食
23:00 就寝
松村 舞 さんについて、もっと知りたい!

 

Ratelで一緒に働きたい!

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「ちょっと話を聞いてみたい」など、お問い合わせもお待ちしています!

  • mamapro.120@gmail.com

 

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